FP3級合格に必要な「マーケット環境の理解」の基礎知識

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FP3級の試験では社会保険や税金の知識だけでなく
「金融」にも大きなウェイトが課せられます。

 

テキストの丸暗記で合格ラインには十分到達可能ですが、
金融は複雑でテキストの情報だけでは理解しにくいかと思います。

 

私自身テキストを読んでも意味がわからないことだらけだった経験があるので
この記事では基礎的な用語や金融の知識について
解説や補足を多めに入れてわかりやすくご紹介します。 

 

マーケット指標

金融資産を運用するためには経済に関する指標を読み取れなければいけません。

ここでで基礎的な金融う指標をご紹介します。

国内総生産(GDP)

一定期間内に国内の経済活動によって生み出された財やサービスなどの付加価値の総額

 

例えば50円の材料費でパンを作り、
100円で売れたとしたら
そのパン屋さんは50円の付加価値を生み出したことになります。

 

経済成長率

経済成長率はGDPの増減率のこと

 一国の経済がどの程度成長しているのかを見ることができます。

 

「今期のGDPは○%上昇」と実際はGDPの数値よりも
こちらの経済成長率の数値の方がよく耳にするはずです。

 

ただし経済成長率は単純なGDPの増減を表しているだけではありません。

物価の変動を考慮したGDPで計算されています

 

例えば50円の材料費で100円のパンを作る場合

一年後に物価が1%上昇したら
実質49.5円の価値の材料費で
99円の価値のパンを作っている事になり
生み出された付加価値は49.5円になってしまいます。

 

上記のように物価の変動を計算に入れないと
同じ数値のGDPでも
経済成長率は降下していることになってしまうんです。

 

 

そのためただGDPを表した数値のことを名目GDP

物価変動を計算したGDPを実質GDPといい
経済成長率は実質GDPで示されます。

 

景気動向指数

生産や雇用など景気に関わる景気指数を複合した指数のことで
DIとCIの2種類があります。

 

 

景気指数には東証株価指数や有効求人倍率、法人税収入など指標があります。

FP3級ではそれぞれの指標に関する知識までは問われませんが、
景気指数には先行指数、一致指数、遅行指数があることは覚えておいてください。

 

先行指数

一致指数より数ヶ月先に動く指数のことです。

一致指数が上昇していて一見景気がよく見えても
先行指数が下降している場合、慎重になる必要があります。

 

景気の循環(谷から谷まで)ごとに指定される指数は異なりますが
現在内閣府が採用されている指数を参考までにご紹介します。

 

最終需要財在庫率指数

鉱工業用生産財在庫率指数

新規求人率

実質機械受注(製造業)

新築住宅着工面積

消費者態度指数

日経商品指数

マネーストック

東証株価指数

投資環境指数(製造業)

中小企業売上げ見通しDI

 

上記のそれぞれの指数から先行指数を算出します。

 

一致指数

景気と一致して動く指数で現状を表します。

 

生産指数(鉱工業)

鉱工業用生産財出荷指数

耐久消費財出荷指数

所定外労働時間指数

投資財出荷指数

商業販売額(小売業)

商業販売額(卸業)

営業利益

有効求人倍率

 

遅行指数

景気に遅れて変動する指数のことです。

一致指数から半年から一年程度遅れて変化します。

 

第三次産業活動指数

常用雇用指数

実質法人企業設備投資

家計消費支出

法人税収入

完全失業率

きまって支給する給与

消費者物価指数

最終需要財在庫指数

 

 

DI(ディフュージョンインデックス)

上記の3種類の景気指数から算出される景気動向指数のことで、
前年と比較してパーセンテージで表されます。

 

各指標を比較して横ばいなら50%
それ以上なら景気は上昇
それ以下なら下降です。

 

DIを見ると景気が回復局面なのか後退局面なのかが分かります。

 

CI(コンポジットインデックス)

景気指数から算出され基準年との比較した割合で表されます。

100なら基準年と同じで
120なら基準年の1.2倍の景気になっていると言えます。

 

景気の山の高さや
景気の一循環の長さ
また各年度の比較などができます。

 

日銀短観・業状判断DI

日銀短観は日本銀行が全国の主要な企業(資本金2000万円以上の企業から1万社程度を抽出)に景気動向を聞いたアンケート結果のようなものです。

日銀短観は正式には全国企業短期経済観測調査といいます。

 

売上高などを問う係数項目と
景気の実感など主観的な判断を問う判断項目に別れます。

 

 

業状判断DIは日銀短観を数値にしたようなものです。

景気が良いと判断した企業の割合から
景気が悪いと判断した企業の割合を差し引いたもので
50%なら横ばい
それ以上なら景気が良いと思っている企業が多く
それ以下なら景気が悪いと思っている企業が多いことが分かります。

 

景気循環

景気の谷から谷までのサイクルを1循環とします。

 

なぜ景気が循環するのかははっきり分かっていませんが、
人口の変動や技術の進歩などの周期に関係があると言われています。

 

 

マネーストック統計

金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量のことです。

金融機関と中央政府以外が保有している通貨の量を表します。

 

ようは会社や個人が持っているお金の総額のことです。

 

ではなぜこんな数値を図っているいるのか?というと
世の中の物やサービスの量とお金のバランスが保たれているかどうかを測るためです。

 

世の中の物やサービスが減っているのに
流通しているお金の量がそのままでは
インフレになってしまう可能性がありますし
その逆もまた然り


インフレに向かうかデフレに向かうかがある程度読めたりするので
マネーストック統計は投資家にも
有用な指標の一つになります。

 

 

マネーストック統計の区分

マネーストック統計で言うお金には区分があります。

一口にお金と言っても
現金の他に株や投資信託、国債などがありますが
どこまでがマネーストック統計で示されるのでしょうか?

 
マネーストック統計では
M1

M2

M3

広義流動性
の4つにお金の範囲を区分しています。

その中でもマネーストック統計として表される代表的な区分はM3というものになります。

 

M3の内訳は
現金
預金(外貨預金・定期預金)
譲渡性預金(企業が扱う預金)

どれも個人や企業がすぐに何かを買ったり、何かに使ったりするのに使えるお金です。

 

 

ちなみにM1は
現金
預金(外貨預金や定期預金)

M3よりも流動性(換金性)の高いお金です。

 

 

M2は
現金
預金(外貨預金・定期預金)
譲渡性預金(企業が扱う預金)

M3と一緒ですが、

ゆうちょ銀行、農協・信農連、漁協・信魚連、労金・労金連、信用組合・全信組連に預けたものは含まれません。

 

上記の金融機関は株式会社である他の銀行などとは
経営方法が違うため
特別に区分されています。

 

ゆうちょは法人融資は行っていませんし、
農協や漁協なども融資先は特定の職業の人だけです。

 

 

広義流動性は
現金
預金(外貨預金・定期預金)
譲渡性預金(企業が扱う預金)
金融債
普通社債
国債
外債
投資信託
金融機関発行CP

企業や個人が現金にすることができるものすべてが広義流動性になります。

 

 

企業物価指数

企業間の取引や貿易のにおける商品の価格変動を表したもの
毎月日銀が発表します。

 

約1000品目の価格を基準年を100として表し、
その平均(品目によって取引数が異なるので加重平均)した数値が物価指数になります。

「○○年より××%上昇した」などと表すのが一般的です。

 

5年毎に基準を改定し
技術の進歩にあった品目を選定しています。

 

消費者物価指数

家庭が購入する商品やサービスの価格変動をあらわしたもの。

企業物価指数の家庭版といったところです。

 

企業物価指数は卸売価格の物価のようなもので
消費者物価指数は小売り価格の物価になります。

 

そのため企業物価指数に遅れて
消費者物価指数が動くことが一般的です。

 

 

マーケットの変動要因

金利は景気と物価と為替などの状況によって
需要と供給のバランスが保たれるように決まります。

景気と金利

景気が上昇すると金利も上昇します。

物価と金利

物価が上昇すると金利も上昇します。

景気と株価

景気が拡大すると株価は上昇します。

景気と債券

景気が拡大すると債券は下落します。

景気と為替

円高は輸入品の価格が下がり景気にはプラス。

一方輸出企業の収益は悪化し景気にはマイナス。

 

金融政策

日本銀行が通貨の価値を安定させるために行う政策です。

主に預金準備率操作と公開市場操作の2つの政策があります。

 

 

預金準備率操作

市中銀行は受け入れた預金を一定の割合で日本銀行に預けるのですが、
その割合(預金準備率)を変更して世の中に出回る通貨量の調整をすることです。

公開市場操作

短期金融市場に日銀が直接介入して通貨量の調整を行うこと。 

日銀が国債などを買って世の中に出回る通貨量を増やしたり
国債を売って世の中のお金を吸い上げたりします。

 

金融市場

 金融市場は各地に無数に点在する企業や投資家が集まってお金のやり取りをする場所のことです。

金融市場は取引する物や期間、人や団体などにわけて
複数の市場があります。

 

短期金融市場

金融商品の満期までの期間が1年未満のもの(短期資金)を取引する市場です。

満期が一年未満ということは
一年以内に現金化できる商品だけということになります。

 

企業が一時的に必要な資金の調達として債券などを発行することが多く
金融政策に比較的敏感です。

 

インターバンク市場

短期金融市場の中でも
金融機関だけが取引をすることができる市場。

日銀や証券会社、信用金庫や保険会社まで参加でき
お互いの資金の過不足の調整などを行います。


金融機関が資金を余らせておくのももったいないことなので
インターバンク市場は効率よく経済を回すのに不可欠な市場と言えます。

 

また為替市場の円相場はこのインターバンクの取引レートが基準になります。

 

インターバンク市場は取引する物や期間によって
コール市場や手形市場などに分けられます。

 

オープン市場

一般の事業法人が取引できる市場

企業や地方公共団体なども参加することができ
お互いの資金の過不足を調整し合います。

 

レポ市場やCD(譲渡性預金)市場、CP(無担保約束手形)市場などがあります。

 

 

長期金融市場

金融商品の満期までの期間が1年以上のものを取引する市場。

株式市場や債券市場があります。

 

金融商品の選択

金融商品を選択するには3つの基準をもとに考えます。

 

安全性

元本の保障。利回りの確実性。

収益性

収益率の高さ。

流動性(換金性)

 現金化のしやすさ。

 

 

収益性が高まる場面

金利上昇局面のときは変動金利型の商品が有利

金利下降局面のときは固定金利型の商品が有利

 

 

最後に

FP3級の試験では

各マーケット指標が何を表しているのか
景気が良くなると金利はどうなるのか

など基本的な知識があるだけで十分です。

 

FPのテキストに記載されている情報だけ暗記しとけば
とりあえず合格ラインに達することはできるかもしれません。

 

しかしテキストの情報量は少なすぎて理解が及ばない部分が多々あると思いましたで
この記事では補足がかなり多くなっています。