FP3級合格に必要な「損害保険の基本」をわかりやすく解説

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FP3級の試験では生命保険と同じくらい損害保険からも出題されます。

火災保険や自動車保険など損害保険と言っても種類は様々で
しくみもそれぞれ全く違うので覚えるのも大変なんです。

 

この記事では損害保険全てに通ずることを主にまとめてあります。

 

損害保険の機能

損害保険は偶然の事故や災害に対して備える保険です。

保険会社などを通じて多くの人が保険料を支払い
相互にリスクを負担することで
いざと言うときの経済的な負担を軽減することができます。

 

 

例えば損害保険の中には自動車保険というものがありますが、
一般的に支払った保険料は
事故などを起こさない限り戻ってきません。

しかし万が一事故を起こして多額のお金が必要になったときは
支払った保険料以上の保険金が支払われます

 

損害を被った時だけしか給付は無いので
基本的には生命保険のように
何もなく満期を迎えれば満期金が支払われる
というようなしくみはありません。

 

損害保険の保険金

損害保険と生命保険で大きく違うところは
保険金の支払い方法です。

生命保険は定額払いなのに対し
損害保険は実損払いになります。

 

生命保険では死亡や怪我をした場合
契約時に決めた保険金の金額が支払われます。

対して損害保険は保険金の限度額の範囲で
生じた損害額のみが支払われます。

 

損害保険の保険金額は
対象となる建物や家財の時価
もしくは保険対象を新たに購入したときの再調達価格を元に計算をします。

 

損害保険は保険金のかけ方の違いによって
全部保険一部保険超過保険と3つの種類に分けられます。

 

全部保険

保険金額と損害額が同じ損害保険契約。

例えば
評価額2000万円
の家に
2000万円の保険金額をかける保険で
損害を被った場合2000万円が支払われます

 

一部保険

保険金額が損害額より安い損害保険契約。

例えば
評価額2000万円の家に
1000万円の保険金額をかける保険契約で
損害を被った場合500万円が支払われます。

 

 

 

なぜ500万円になってしまうのかというと
比例てん補という計算をして
保険金額の損害価格に対する割合
保険金額が決まってしまうからなんです。

 

比例てん補の計算方法

2000万円の家に50%の1000万円の保険金をかけた場合
2000万円の家が全焼しても50%は自己責任ということで
保険金1000万円のうち50%の500万円の保険金しか
支払われないが比例てん補です。

 

実際に家が全焼してしまったらこんな補償額では足りませんし納得できる人は少ないでしょう。

しかし、火災保険のことをよく知らないで加入すると
いつの間にか一部保険にされてしまうことがあるんです。

注意するのは住宅ローンを組む時です!

 

 ローンを組む時の注意点

住宅の購入をするときに
建物全体の評価額ではなく
住宅ローン借入額で火災保険の加入を勧められる場合があります。

 

建物全体の金額が3000万円で
頭金1000万円、ローン2000万円の場合

2000万円の火災保険を勧められてしまうことがあります。

 

でもその場合は保険金額が建物全体の3分の2の一部保険となってしまうので、
万が一のときに、
比例てん補で実際に被った損害の3分の2の保険金しか下りない可能性もあるので注意が必要です。

 

保険料は高くなりますが、
実際に被った損害額全部の保険金額が下りるように
全部保険にするか実損払いを選択できる火災保険に加入しておくと万が一の時も安心です。

 

超過保険

保険金額が損害額より高い損害保険契約。

評価額2000万円の家に
4000万円の保険金額をかける保険契約で
2000万円が支払われる保険です。

 

なぜ4000万円の保険をかけて2000万円の保険金しかもらえないのかというと
損害保険は損害に対する保険なので、
保険金をもらうことで利益が出てしまっては本来の趣旨に反してしまうからです。

たとえ4000万円分の保険料を支払っていても無駄になってしまう可能性もあります。

 

超過保険になっていることについて
契約者や被保険者に善意かつ重大な過失がない場合は
超過部分の損害保険契約を取り消すことができ
実際の保険金額は2000万円になります。

その場合、支払った保険料もさかのぼって計算し返還することもできます。

 

建築物の場合、
経年劣化で評価額が年々減少してしまい
知らぬ間に超過保険となるケースがあるので
火災保険も定期的にかけ直しなどをすることで保険料の節約になります。

 

 

損害保険のしくみ

損害保険の保険料は生命保険と同じように
大数の法則収支相等の原則に基づいて計算します。

また損害保険は利得禁止の原則というものも前提となっています。

 

大数の法則

大数の法則は偶然の事柄でも
事象を多く集めると一定の法則が見いだせることをいいます。

 

例えば運転免許がゴールドの人でもブルーの人でも
交通事故が起きるのは偶発的なものですが、
多くの交通事故の事例を調べて見ると
ゴールド免許の人のほうが事故を起こす割合が低いことが分かります。

このゴールド免許の人の方が事故を起こしにくいという確率に基づいて
ゴールド免許所持者の保険料をブルーの人より低く設定するのが大数の法則です。

 

収支相等の原則

収支相等の原則は保険会社の収支の均衡が保たれているかどうかを示す原則です。

大数の法則で割り出せる支払われる保険金の総額保険会社の運営に使われる経費の合計が
契約者から集めた保険料の総額運営益の合計と
等しくなるように保険料を設定しなければならない
というものが収支相等の原則です。

 

利得禁止の原則

利得禁止の原則は保険金を受取ることによって
利益を受けてはならないという原則です。

例えば交通事故で車の修理費用が100万円だった場合、
120万円までの車両保険に入っていたとしても
100万円以上の保険金を受け取ってはいけません。

 

損害の補償をするのが損害保険の本来の目的なので、
修理費を偽装して20万円分多く保険金を受領し利益にすることはできないんです。

 

 

保険契約・損害賠償と法律知識

FP3級では損害保険について特殊な法律を2つ覚えなければいけません。

自賠責に関する法律(自動車損害賠償保障法)と
失火に関する法律(失火責任法)です。

 

自動車損害賠償保障法

車を運転する人は必ず自動車損害賠償責任保険(自賠責)に加入しなければいけません。

自動車で事故を起こすと被害者は多額の損害を被る可能性が高いため、
被害者の保護を目的とするための制度として確立しました。

 

自賠責に加入していない状態で運転しているだけでも
道路交通法違反で免停になるほど重い罰が下ります。

 

 

・自賠責の支払限度額(一人あたり)

傷害    120万円

後遺障害  4000万円

死亡    3000万円

 

 

もし無保険で事故を起こしてしまったら
さらに重い損害賠償を請求されます。

 

任意保険は自賠責に加入していることが前提になりますので、
自賠責の補償限度を超えた分しか損害の補償はされません。

例えば任意保険には加入していても自賠責未加入の状態で
1億円の損害のある事故を起こした場合、
任意保険では自賠責分の3000万円を引いた7000万円分の補償しかしてくれません。

つまり3000万円は自己負担をする必要があります。

 

事故を起こした人に3000万円の支払い能力がない場合
一旦国土交通省が治療費等を立て替えますので、
国土交通省から損害賠償を請求されることになります。

 

また被害者が国民健康保険や労災保険などの社会保険を利用した場合、
その利用分を他の機関からも損害賠償請求されますので
実際の損害賠償額は自賠責の支払限度額以上になります。

 

失火責任法

損害保険は普通、加害者の保険で被害者に損害賠償金を支払いますが
失火の場合はその限りではありません

 

例えば隣の家から出火した火事のもらい火で
自分の家が燃えても自分の火災保険を使わなければいけません。

 

しかし出火の原因が寝タバコなど少し注意するだけで防げるような場合
過失が重大だと判断され隣の家の損害賠償を負わなければならなくなります。

 

火災保険の加入は強制ではありませんが、
持ち家の場合は火災保険の加入を住宅ローンの借り入れ条件にしている銀行がほとんどです。

また賃貸の場合も火災保険に加入しなければいけないところばかりですので、火災保険加入率は80%ほどになるそうです。

 

 

 

 

個人契約の損害保険と税金

損害保険でも保険料の控除のあるものや
保険金に税金が課せられるものなどがあります。

 

個人で加入する損害保険と税金の関係で一番特徴的なのは地震保険控除。

さらにここでは保険金に課税される保険とされない保険についてもご紹介します。

 

地震保険料控除

地震保険料控除は
配偶者やその他の親族が所有している住居用家屋・生活用動産の保険契約に適用され、
地震・津波・噴火等を原因とする火災や損害に対して保険金が支払われるものが対象
とされています。

地震保険は火災保険とセットで加入しなければいけませんが
地震保険の保険料分だけが控除の対象となります。

 

控除額は下記の通り

所得税

払込保険料    控除額

50000円以下   保険料全額 

50000円超え   50000円 

個人住民税

払込保険料     控除額

50000円以下    保険料の半額

50000円超え    25000円

 

 

 なぜ地震保険だけ控除があるの?

ちなみに損害保険で保険料控除があるのは地震保険だけです。

そもそもなぜ地震保険だけ控除があるのかというと
加入者を増やしたいからなんですね。

地震保険の加入率はまだまだ30%程度と低めです。

 

地震保険は窓口こそ民間の損保会社が請け負っていますが、
実際は政府が運営しているようなものです。

国民から集められた地震保険の保険料は
地震再保険特別会計といって特別にプールされています。

 

政府は大震災に備えて保険料を控除してでも
加入者を集めておきたいんです。

 

例えば大震災が来ると住む場所がなくなり仮設住宅に住む人が増えます。

最小限の設備しか無い仮設住宅を建設するだけでも
莫大な費用を公費で賄わなければいけません

 

しかしあらかじめ地震保険料として国民の住宅資金を集めておけば、

公費を使うことなく国民の住宅を補償することができます。

 

 

現在の仕組みでは
地震保険に加入している30%の世帯のための財源はありますが、
未加入の残りの70%の世帯の人々の住宅補償は目処が立っていない状態です。

地震が起きてから公費でなんとかするしかない状態なんです。

 

つまり政府は関東大震災クラスの大きな地震がきた場合でも
公費を使わず多くの国民に住宅を補償するため
地震保険料を控除して加入者を増やそうとしています

 

 

保険金が非課税の損害保険

損害保険の保険金は基本的に非課税です。

火災保険金・地震保険金・医療費用保険金・後遺障害保険金・所得補償保険金などが非課税になります。

 

損害保険金は損害の穴埋めをするためのお金なので
利益ではないため非課税になっているんです。

 

 

課税対象となる損害保険金

傷害保険の死亡保険金は課税される場合があります。

被保険者が保険料を負担して
相続人が保険金を取得していた場合は相続税として課税されます。

 

また、解約返戻金や満期保険金など利益になる保険金は課税対象です。

 

 

法人契約の損害保険と税金

FP3級では法人契約の損害保険についても学習しなければいけません。

 

保険料と経理処理

法人が支払う保険料は損金で処理するのが基本です。

しかし満期返戻金月の契約では積み立て保険料部分に関しては資産計上します。

その他の部分は損金です。

 

満期返戻金・配当金と税金

法人が受け取る満期返戻金と配当金は益金に算入します。

資産計上していた保険料は損金に算入します。

つまり課税対象になるのは益金と損金の差額です。

 

火災保険と経理処理

法人が取得した保険金は益金に算入します。

損害額は損金処理するので、
保険差益が課税対象になります。

 

傷害保険と経理処理

役員や従業員を被保険者とする契約の保険金は益金に算入します。

従業員の退職金に充てた場合は損金に算入します。

 

 

 

FP3級合格のための「損害賠償の基本」まとめ

過去問を見るとこの記事にまとめた部分から試験に出題されることは少ないですが
火災保険や地震保険、自動車保険など
損害保険全てに通ずる基本的な前提知識です。

生命保険との違いにも注意しておいてください。